雇用関係助成金の難易度考

「〇〇すれば〇万円もらえます。」
「補助金と違って申請するだけでもらえます。」

 

 こんなFAXが時々関与先に入り、「こんなFAXが来たんだけど」と相談されることがあります。送ってくるのは社労士事務所のこともあれば、助成金申請代行会社のこともあります。経営者の方も、もらえるならば欲しいけれど、本当にそんな簡単にもらえるのか半信半疑です。

 

 確かに雇用関係の助成金は、補助金と違って、決められた手順で決められたことをすれば原則支給されます。しかし、それを「簡単」とは、決して言えないと私は思います。
 特に中小企業になればなるほど、受給のハードルは高いのが事実です。なぜなら受給のためには就業規則を整えたり、パート社員を正社員にして給与を上げたり、生産性を上げる設備投資をしたりと、多くの助成金で企業の持ち出しが発生するからです。

 

御社に就業規則はありますか?
それは最新の法律に対応していますか?
雇用契約書を作成していますか?
給与台帳には労働時間が記載されていますか?
残業代の未払はありませんか?

 

 小さな会社では就業規則がないか、あっても10年以上前に作成したまま改定していないものも多いです。受給のために、こういうものがなければ作って受給まで持っていきますが、それは決して簡単ではありません。
中にはこれまでのやり方を変えなくてはいけなくなるかもしれません。
また認識の誤りによる給与の未払が発覚することもあります。
「もらうためには、〇〇を受け入れなければならない」という状況が発生するかもしれません。

 

 よって「簡単にもらえます」という文句は、あまり信じない方がよいです。
(個人的には、勧誘する側は簡単にもらえるなどと決して言わないで欲しいと思っています…)

 

 助成金は、日頃の労務管理の不備の改善に繋がることも多く、メリットはありますので、御社にとってプラスになるなら、ぜひ覚悟を持って取り組んでいただきたく思います。(2023.4.14)

雇用調整助成金 新型コロナ特例の大幅延長

 緊急事態宣言解除にも関わらず、再び感染者の増加、東京都は7月12日に再度の緊急事態宣言と、全国で第5波の感染者増加が止まりません。7月28日に、雇用調整助成金について厚生労働省のリーフレットが更新されました。

 

12月末までの受給期間の延長

 コロナの影響が出始めた令和2年1月24日から令和2年12月31日までの期間に、すでに雇用調整を行っていた場合は、受給できる期間が令和3年6月末から同12月末までに大幅に延長されました。これは、現在この助成金を受給しており、いつ打ち切られるか不安だった企業にとってとても大きな意味を持ちます。

 

9月末までの新型コロナ特例の延長

 さらに、受給できる上限額のアップや要件が緩くなる特例措置の方も、9月末まで延長が決定しました。5月以降もこれまで同様、自社の状況に当てはまる特例措置を利用して申請できます。

 

厚生労働省リーフレット

雇用調整助成金の支給を受けている事業主の方へ 対象期間延長のお知らせ
令和3年5月から9月までの雇用調整助成金の特例措置等について

 

 申請期間や利用する特例措置によって申請用紙が異なりますので、注意が必要です。要件や申請用紙がご不明の場合は、どうぞご相談ください。

7月までの雇用調整助成金 新型コロナ特例の延長

 東京のほか一部地域で緊急事態宣言が再延長されましたが(まん延防止措置重点地域も同様)、雇用調整助成金について5月に厚生労働省のリーフレットが更新されました。
 これらの地域では5,6月も、引き続き要件付きですが雇用調整助成金の新型コロナ特例を受けることができます。ただし、要件から外れる企業は、1日辺りの上限額が15,000円から13,500円に、また解雇等を行わない場合の支給率も10/10から9/10に引き下げられました。

 

7月以降の雇用調整助成金

 さらに5月28日の発表で、気になる7月以降についても政府の方針が示されました。緊急事態宣言の延長でわかるように、感染が収束せず雇用情勢も悪化していることから、7月も特例措置を延長することになったようです。8月以降については、雇用情勢を踏まえて検討されるとのことです。

 

厚生労働省リーフレット

令和3年5月・6月の雇用調整助成金の特例措置について
7月以降の雇用調整助成金の特例措置等について」(別紙PDF

 

 企業によっては、申請期間によって申請用紙が異なりますので、注意が必要です。要件や申請用紙がご不明の場合は、どうぞご相談ください。

雇用調整助成金の新型コロナ特例は4月末までです

 年明けから始まった緊急事態宣言ですが、3月に2週間延長されました。その影響で、雇用調整助成金の新型コロナ特例も2月末までとされていたところ、4月末までに延長されました。5月以降は徐々に特例は縮小され、申請はできますが受給額が特例期間より少なくなるでしょう。また、元々受給できる期間は1年間の助成金ですので、昨年から申請している場合は、特例を使っても一端6月末で終了となります。

 

特例終了とアフターコロナ

 雇用調整助成金の財源は、企業と働く人が負担する雇用保険料です。昨年の特例開始から今年3月19日までの累計支給決定件数は287万676件、累計支給決定額は3兆790億円にのぼっています。リーマンショック時の同助成金と比較しても桁違いの金額が雇用維持のために使われました。
 政府もこの間、2度の補正予算で1兆円規模を当てて雇用維持に努めてきましたが、これ以上の多額の財政負担には耐えられそうにありません。雇用保険料からプールしていた雇用安定資金はすでに枯渇し、同じ雇用保険の失業手当のための積立金を借り入れてしのいでいます。
 今年度の雇用保険料は、新型コロナ感染症の深刻な影響を考慮して据え置かれましたが、来年度以降、雇用保険料の値上げは避けられないと思われます。(2021.3.28)

雇用調整助成金は6月末まで申請可能に

 昨年からたびたび特例措置の延長がなされていた雇用調整助成金ですが、休業開始から1年を超えても、今年6月末までは助成金を受給できることになりました。厚生労働省のサイトにリーフレットが掲載されています。

 

厚生労働省リーフレット

雇用調整助成金の特例措置に係る大企業の助成率の引き上げのお知らせ
雇用調整助成金は短時間休業にもご活用いただけます
雇用調整助成金を受けている事業主の方へ--1年を超えて引き続き受給することができます

 

 雇用調整助成金は、もともと1年の休業(出向・教育訓練)計画を立てて、計画期間の1年間受給できる助成金でした。今回、昨年の3月頃から休業を開始した会社が多かったと思いますが、新型コロナ感染症の影響が長引いており、この2月、3月以降はどうなるのか大いに心配されていたことと思います。

 

 特例措置自体は2月末までのため、3月以降は受給率が下がったり、要件が厳しくなる可能性はありますが、ひとまず6月までは休業が続いていれば、これまで通り申請することが可能となり、一安心できます。

 

 また、緊急事態宣言が発出された大手飲食チェーン等を念頭に、一部都道府県では大企業の助成率も引き上げられています。短縮営業をした場合には、1時間単位での休業となり、雇用調整助成金の対象となる旨もアナウンスされています。

 

 年末年始を過ぎて新規感染者は下がっているようですので、雇用調整助成金を活用して何とかこの冬を乗り切りっていただきたいと思います。(2021.1.25)

 

産業雇用安定助成金(仮称)

 10月13日に厚生労働省のサイトにて、「雇用シェア」(在籍型出向)についてのリーフレットが掲載されました。新型コロナ感染症の影響で一時的に仕事がない状態となった従業員を、その雇用関係は維持したまま、人手不足の業界へ出向させます(在籍型出向)。その際、一定の用件を満たせば、雇用調整助成金を使うことができます。

 

産業雇用安定助成金(仮称)の創設

 さらにこれを発展させる形で12月、在籍型出向の活用による雇用維持への支援強化、および「産業雇用安定助成金(仮称)」の創設が掲載されています。コロナ禍において一時的に人手過多となった企業は、産業雇用安定センターに、人手不足の業界へ無料で人材のマッチングをしてもらえます。そうすることで出向元だけでなく、出向先の企業へも一定の助成がなされるようです。
 現在の雇用調整助成金の新型コロナ特例は来年2月末までと決まっていますので、厚労省としてはぜひともこちらを活用し、引き続き雇用維持を図って欲しいということだと思われます。現時点ではあくまでも予定ですが、第三次予算が成立し、奨励の改正等を経て実現化するようです。
詳しくはこちら:雇用シェア厚労省リーフレット  産業雇用安定助成金(仮称)の創設(2020.12.24)

エイジフレンドリー補助金

 エイジフレンドリー補助金とは、厚生労働省が令和2年度に創設した、中小企業対象の補助金制度です。高年齢者が安心して働けるよう必要となる設備・装置を購入したり、職場の安全衛生対策等をした場合に、その金額の2分の1が補助されます(上限100万円、1企業1度限り)。

 

 想定される対策は、職場における通路の段差解消・スロープ設置、床の滑り防止対策、介護現場におけるリフトの導入、あるいは新型コロナウイルス感染予防のため、基準に適合した空気清浄機の購入などが挙げられています。
 厚生労働省のサイトでは「高齢者が就労する際に感染予防が特に重要」だとして、社会福祉施設・医療保健業・旅館業・飲食サービス業等の「利用者等と密に接する業務での、新型コロナウイルス感染防止が望まれている」としており、特に高齢者に関連する職場でのクラスター感染予防を絡めているところが特徴的です。
 応募要件は、中小企業で60歳以上の労働者を常時1人以上雇っていることのみですが、補助金の場合、基準に適合するか評価が行われ、合格した場合にのみ交付決定されます。購入した機器や行った対策が制度に合致している必要があります。

 

 なお、今年度の受付期間は6月12日から10月末日までで終了してしまいます。しかし高齢者の就労は今後も拡大傾向のため、来年度以降もこの補助金は継続するのではないかと思われます。 ※2020.11.6追記:今年度受付期間は、2020年11月13日まで延長されました。
詳しくはこちら:エイジフレンドリー補助金事務センター(一般社団法人日本労働安全衛生コンサルタント会)  (2020.9.30)

東京都独自の奨励金

 国の定める雇用調整助成金、緊急雇用安定助成金、または学校休業等対応助成金を受給した中小企業を対象に、東京都は、非常時における雇用環境を整備を行うことで10万円を交付する独自の奨励金制度を実施しています。東京都にある中小企業で雇用調整助成金等の支給を受けていれば、対象となる可能性があります。

東京都新型コロナウイルス感染症対策雇用環境整備促進奨励金

 対象となるには、国の雇用調整助成金等を受給したこと以外にも、労働関係法令違反がないことや法人都民税等の未納がないなど、細かい要件があります。今回、国の雇用調整助成金が特例により要件が緩和され、多少の労働関係法令違反があっても受給できたことから、こちらはより要件が厳しい印象です。
 事前に計画書を作成・提出したあと、2人以上の社内プロジェクトチームを組み、感染症対策の現状分析・計画を立てて具体的な取り組みを実施します。実施後は実績報告を提出し、問題なければ10万円が支払われます。
詳しくはこちら:TOKYOはたらくネット 募集案内チラシ
(2020.9.2)

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